生命を見つめるフォト&エッセー

受賞作品

第4回エッセー部門

第4回入賞作品 − 小学生の部 
優秀賞

「お父さんのがん」

溝口 美桜(10)福岡県

 わたしのお父さんはがんです。わたしがようち園の時に病気になりました。100万人に1人しかかからない、とてもめずらしいがんです。大きな手術を2回しましたが、もう治らないとお医者さんに言われて、こうがんざいをしています。少しでも長生きするためです。

 お父さんは、わたしとの思い出を作ろうねと言って、わたしといっしょにできることを考えてくれます。わたしはかん国のガールズグループのファンで、お父さんもメンバーや歌を覚えてファンになりました。去年、わたしはそのガールズグループのコンサートに行きたかったけど、大人気でチケットが全然取れませんでした。それでお父さんは「日本でチケットを取れないなら、外国のコンサートを取る。」と言って、マレーシアのコンサートを取りました。

 夏に、わたしと2人でマレーシアに行きました。コンサートでは、お父さんはグッズを買う時に、「わざわざ日本から来たんだからお願い。」と言って、お店の人からおまけしてもらいました。となりの席の台わんから来たファンと話して、外国の人と一しょにもり上がりました。次の日には、お父さんのマレーシアの友達と会い、ドッグランを見せてもらって、ドライブして、楽しいことがいっぱいでした。お父さんは薬のせいでオレンジやレモンを食べられません。レストランでご飯を食べた時に水が出てきて、私は水の入ったジャーにレモンのスライスが入っているのを見つけて、お父さんに教えました。レストランの人に水をかえてもらって、「美桜ちゃんありがとうね、助かったよ。」と言ってくれました。それから、お父さんの食べるものにオレンジなどが入っていないか、パッケージのうらを見て、わたしが確にんしています。

 でも、わたしは前にお父さんをあまり好きじゃなかった時があります。お父さんがおこりっぽくなったからです。こうがんざいの副作用が強くて、ずっとつえを使って歩いていました。お父さんと歩くとゆっくりになります。すると、後ろからすごい速さで来る自転車や、横だん歩道で止まらない車とぶつかりそうになって、お父さんは、「おいこらお前、前を見ろ。」とどなります。すごく大きな声なので周りの人が見るし、けんかになりそうで、ドキドキします。おこりっぽい時のお父さんはあまり好きではなかったです。

 もうお父さんはおこらなくなりました。冬の家族旅行でホテルの朝ごはんを食べているとき、「美桜ちゃん、今までごめんね。もうおこらないから。」と言いました。わたしの好きなフレンチトーストを食べているときでした。うれしくなってグッジョブポーズをしました。おこるのをみんながいやがっているので、直してくれたんだと思います。

 体がきつくない休みの日には、時々フレンチトーストを作ってくれます。お父さんに長生きしてほしいです。

(敬称略・年齢、学年などは応募締め切り時点)
(注)入賞作品を無断で使用したり、転用したり、個人、家庭での読書以外の目的で複写することは法律で禁じられています。

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