生命を見つめるフォト&エッセー

「第8回生命いのちを見つめるフォト&エッセー」各部門の受賞作品をご覧いただけます。

第8回フォト部門

※画像をクリックすると拡大表示されます。

一般の部

厚生労働大臣賞
「孫と七夕」
渡邊 雅春(香川県)
審査員講評

 おじいちゃんが「どうだ!」と言わんばかりの表情で吹くトランペット、それをうるさがっている子どもたちの表情がなんともコントラストがあって、楽しい一瞬の表情を活き活きと切り撮ることができました。(熊切 大輔)

日本医師会賞
「癒やされるとき」
箸方 陽子(香川県)
審査員講評

 老夫婦の静かな時が描かれています。作業の合間のお昼休み、ホッとするひと時なのでしょう、柔らかく優しい笑顔が時間の流れを感じます。構図に周りの環境をたっぷり入れたことでストーリーが感じられました。(熊切 大輔)

読売新聞社賞
「母の愛」
東 和文(神奈川県)
審査員講評

 ひなの安心したような顔も凛々しい母の顔も、親子の表情を切り取った一枚に心が温かくなりました。この瞬間の背景に、親鳥が雛の為に1匹の魚を捕え戻ってくる姿まで想像が広がります。(奈緒)

審査員特別賞
「負けんぞー!」
林 よし子
(山口県)
審査員講評

 本作品は撮影した方の笑顔まで想像してしまいます。腕相撲一つで盛り上がるのに重ねた年齢は関係なく、今この瞬間にある笑顔の尊さと、これから生きていく未来が楽しみになる一枚でした。(奈緒)

審査員特別賞
「この冷水を何としても吞みたい」
藤田 健三
(福島県)
審査員講評

 写真の向きについて審査会で話題になりました。枝にぶら下がったメジロが、氷が溶けて先端から落ちる水滴を飲もうとしています。くちばしで突いた氷の先端が落ちる瞬間に、生命を感じます。(岩合 光昭)

審査員特別賞
「生まれてきたらみんなで遊ぼうね」
松山 恵美子
(滋賀県)
審査員講評

 お腹のエコーの写真とともにという作品は時々見かけますが、三人では珍しいですね。良い同級生になりそうです。背の順に並んだ構図がリズム感を演出できました。ほのぼのとした気持ちにさせてくれる作品です。(熊切 大輔)

入選(審査員特別賞次点)
「笑顔に包まれて」
吉野 宏映
(埼玉県)
審査員講評

 「笑顔に包まれて」育つ子は幸せだなぁと、こちらまで笑顔にする作品です。タイトル良いですね。背景の旗や絵の彩り、白い面や紅白のまわしなど、すべて効いています。たくましく育って欲しい。(岩合 光昭)

入選
「ぼく!散歩が大好き」
渡邊 次夫
(秋田県)

小中高生の部

文部科学大臣賞
「いつもありがとう」
中山 あいり(新潟県)
審査員講評

 被写体の捉え方が素晴らしい。ウシの名前を呼び掛ける、声が聞こえてきそうです。育て、慈しんできた絆を感じます。ウシの目とご主人のメガネの輝きをキャッチする、光線の読み方も上手です。(岩合 光昭)

優秀賞(文部科学大臣賞次点)
「いつまでも笑顔で」
糸数 月香
(沖縄県)
審査員講評

 本作品は、女性だけでなく腕に抱かれるワンちゃんも穏やかな笑みを浮かべているように見えます。この笑顔をずっと見たいという純粋な想いと願いの込められた写真だと思いました。是非いつまでも撮り続けていただきたいです。(奈緒)

優秀賞
「おてつだい」
須田 芽未
(埼玉県)
優秀賞
「春の光を求めて」
田中 詩浬
(大阪府)
優秀賞
「弟よ、入学おめでとう」
川崎 仁衣菜
(広島県)

審査員からのひとこと

熊切大輔(日本写真家協会会長)
熊切 大輔

 今回も素晴らしい作品が今まで以上に多く集まり、レベルの高い審査が行われました。応募作品はバラエティに富んだ被写体、そしてジャンルが集まり甲乙つけがたい作品に審査員一同、 大いに悩ませて頂きました。全体的に印象に残ったのは表情豊かな作品が多く集まったところです。

 祭りやイベント、旅などようやく今までの生活が戻ってきた感触を皆さんもお持ちでしょう。そこで生まれるのはやはり「笑顔」なのではないでしょうか。希望や楽しさを心の底から感じた時に生まれる笑顔という被写体は、喜びに満ちあふれフォトジェニックです。今回はそんな何気ない日常からネイチャーまで、生命の素晴らしさや力強さを感じる受賞作品群になったように思います。

岩合光昭(動物写真家)
岩合光昭

© Machi Iwago

 「生命いのちを見つめるフォト&エッセー」も8回目となりました。応募写真を見ていて、皆さんの撮影はもちろん、応募するということにとても真摯しんしに挑んで下さっていることを深く感じました。コンテストも成長、成熟するのですね。皆さんを始め、関わるすべての方のおかげです。

 「生命」というテーマに対して、さまざまな考え方があることに、いつもハッとさせられます。大切な生命をどのように捉え、守り、時に厳しく、時にいつくしむ。それをどう写真に収めるのか、審査をしていて、楽しい反面、とても真剣になります。

 今回、さまざまな立場の審査員が、同じ写真を選ぶことが多かったことも印象的でした。力のある写真が増えています。

奈緒(俳優)
奈緒

 昨年に引き続き審査員を務めるのは2回目ですが、本年もユニークで力強い作品が多く、とても刺激的でした。

 日本医師会賞『癒やされるとき』のように、人間の日常の中に生命の輝きがあることに気付かせてくれる作品や、文部科学大臣賞『いつもありがとう』のように、生命のありがたさを真っ直ぐに伝えてくれる作品もあり、皆さんからいただくたくさんの学びに感謝したいです。また、今回の応募作品の中で、家族や親しい人の写真に加え、地域のつながりなどが感じられる写真も印象的でした。人と人の距離がまた近づいているのだと改めて実感することができました。

第8回エッセー部門

※タイトルをクリックすると作品が表示されます。

一般の部

厚生労働大臣賞
洗髪が教えてくれた事
平山 直実(神奈川県)
日本医師会賞
それでも愛おしい
丸山 百合果(神奈川県)
読売新聞社賞
妹が遺してくれたもの
鈴木 恵美(宮城県)
審査員特別賞
虹色の千羽鶴
二村 直子(三重県)
審査員特別賞
いのちの伴走者
加藤 有里(愛知県)
審査員特別賞
掌の記憶
原 貴子(東京都)
入選
神様は目の前に()
大庭 三慶(長崎県)
入選
思いのリレー
土井 京子(愛媛県)
入選
出会い
阿部 夕貴(山口県)

中高生の部

文部科学大臣賞
ちっぽけなのに
三浦 聖李(東京都)
優秀賞
生命の価値
ンバ 桃理愛(東京都)
優秀賞
「おかえりなさい」
西谷 柚那(兵庫県)
優秀賞
ピンク色のキリン
髙梨 慈子(東京都)

小学生高学年の部(4~6年生)

文部科学大臣賞
かわいくない弟
澤田 志歩(フランス・パリ)
優秀賞
小児がんサバイバーの弟と僕
廣末 眞士(ドイツ・フランクフルト)
優秀賞
お兄ちゃんはずっと私のお兄ちゃん
河内 穂花(群馬県)
優秀賞
かけがえのない命を実感した日
小林 紬(埼玉県)

小学生低学年の部(1~3年生)

文部科学大臣賞
お母さんの病気とぼくの髪の毛
川原 迪(東京都)
優秀賞
がんばれせいよう兄ちゃん
塩浦 暖(鹿児島県)
優秀賞
ようこそ、この世界へ
青山 栞奈(京都府)
優秀賞
だいすきおおばあちゃん
今泉 智彩香(愛知県)

審査員からのひとこと

養老孟司(東京大学名誉教授/解剖学者)
養老孟司(東京大学名誉教授/解剖学者)

 このところ数年、エッセーの審査に当たっているが、ともかく感動的な話が多い。これは審査には大敵で、感情が動いてしまうと、採点が不可能になる。そこを無理して、なんとか冷静に判断しようとするので、なかなかつらい仕事になる。米寿になってこんなきつい作業を続けることになるとは思っていなかった。

玄侑宗久(作家/福聚寺住職)
玄侑宗久(作家/福聚寺住職)

 今回も、じつにさまざまな病気や出来事、そして人間のもつ力に触れさせていただいた。医療や看護に当たる人々の言葉や振る舞いが、どれほど大きな影響をもつか、深く思い直す機会になった。

 同時にまた、人間の無力さを痛感する原稿もあった。塩浦くんの『がんばれせいよう兄ちゃん』など、読んでいるだけで泣けてくる。無力ゆえの叫びが直に伝わってくる。そしてこの無力感を克服するために、人類は文明を持ったのだと、素直に信じたくなる。

 しかし世相はいかにも物騒で、文明が生みだした鬼も世間には横行している。生命を見つめるのは人間の本能のはずだが、応募作品と日々のニュースのあまりの落差が悲しい。

水野真紀(俳優)
水野真紀(俳優)

 健康のありがたさや、病気と向き合う際の葛藤や希望、支えてくれる人々への感謝など、胸に迫る描写も多く、今回も作品選びに苦慮いたしました。

 受賞エッセーが、読む人の日々の健康への意識、また、病気と向き合う患者さん・ご家族、医療に関わる方々への理解を深めるきっかけとなることを期待しています。また、こうしたエッセーが広がることで、同じ状況にいる方々が「自分は一人ではない」と感じられるような、心のつながりが生まれるのではないでしょうか。

 病気や健康は誰にとっても身近でありながら、ときに語りづらい側面を持つテーマです。勇気をもって応募してくださったすべての作者さんに心からお礼申し上げます。

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