文部科学大臣賞
ドキドキ、ドキン!表彰式の旅
廣末 葵士(7)東京都
今年の2月、初めてぼくとお父さんとお兄ちゃんの3人で日本へ行った。どこに行くのかな? ドキドキ乗った飛行機の中、お兄ちゃんのエッセーを読んだ。ドキン! ぼくのことだ。明日、このエッセーの表彰式に行くと聞いて、またドキン! がんのこと、知られたくない。
ぼくは、生まれてすぐにドイツでがんの手術をした。右のじんぞうと一緒に周りのリンパも取ったから、大きくお腹を切った。2才までリハビリをしたけれど、今でも少し力が入りにくい。走ったりジャンプしたり、他の人がすいすいできることもゆっくりだ。くやしくて、許せなくて、イライラして家族に言う。「あーあ、生まれてこなければよかった」
それをお兄ちゃんがどんな気持ちで聞いていたのか、ぼくは考えたこともなかった。だって、お兄ちゃんはいつも階段を1段飛ばしでビューンとおりる。大声で待ってと言っても止まってくれない。ぼくは、急ぐと右足がひっかかってこけそうになるのに。でも、エッセーを読んで、ずっとお兄ちゃんがぼくを心配していたことを知った。びっくりした。3人だけの旅が、まるで大人の仲間入りのようで、ドキドキが止まらなかった。
ぼくの心ぞうがはれつしそうなくらいドキドキしたのは、表彰式後のパーティーだ。毎年がんになる子どもが大勢いると聞いた。会場で「食べてはダメな物」がある人に会った。ドキン! と体が固まった。手術したのも、がんとたたかったのも、食べたい物をがまんしているのもぼくだけじゃなかったから。がんは怖いけど、1人じゃない。このままの体でいいんだ。うれしくてドキドキが早くなった。
この旅で、ぼくは他の人と違う不便な体を許すことにした。そして、がんとたたかった後も困っていることを周りの人に言おうと思った。いっぱい勉強して、将来、小児がんを早く見つけて治す機械を発明したいと思った。