生命を見つめるフォト&エッセー

受賞作品

第9回エッセー部門

第9回入賞作品 − 小学生高学年の部(4~6年生) 
水野真紀審査員特別賞

一度きりの命

伴野 雅(11)兵庫県

 学校のメダカが死んだ。それは、私が生き物係として世話をしていたメダカだった。まあ、1匹だし、ちょっとしたことだ。どうでもいいや。まだまだメダカはいるし、気にもとめなかった。だけど、その日から毎日、少しずつメダカがへっていった。気づけば、残りはたった9匹だけになっていた。「このままだと全部のメダカがいなくなっちゃうよ」と、友達がぽつりとつぶやいた。その言葉に胸の奥がヒヤッとして、私は「大変だ、このままだと、せっかくみんなで成長を見守ってきたメダカがいなくなってしまう。自分がしっかり世話していなかったからだ」と後悔がじわじわと広がった。その時ふと、「死ぬ」ということについて思い出し、悲しくなった。

 2年前に、私のおばあちゃんは亡くなった。今でもずっと悲しいし、会いたい。おばあちゃんは病気で苦しんで、やり残したこともあっただろうし、もう二度と戻ってこない人生のチャンスを逃してしまったのかもしれないと考えてしまう。今まで、すごく身近で、いつも助けてくれて、優しかったおばあちゃんがいなくなって、胸にぽっかり穴が開いたようだった。もしかしたら、メダカも同じような思いをしているかもしれない。メダカにも家族や仲間がいて、助け合いながら、一度きりの人生を生きているはずだ。

 メダカを通して、おばあちゃんのような身近な人がいなくなることの寂しさを思い出した。そして、誰にでも大切な人がいて、その人を失うと寂しくなるんだと気づいた。それからはメダカの様子をよく観察して、もっと丁寧に世話をするようにした。弱っているメダカがいたら先生に相談したり、水草の位置を変えたり、石に挟まっているメダカを自分で助けてあげたりしたら、メダカの数がへらなくなった。最近は、メダカの卵を探すのに夢中だ。6月になると、水草に卵を産みつけるようになった。やった、新しい命が生まれるかもしれない。今度こそ、慎重に世話をして、過去の失敗をくり返さないようにしようと心に誓った。新しい命が誕生することを友達にも伝えて、一緒に喜びを分かち合い、今はみんなでメダカの赤ちゃんが生まれるのを待っている。

 最初は気にもとめなかったメダカ。まるで知らない人のように感じていた。だけど、「死ぬ」ということを思い出して、すべての命には一度きりのチャンスしかなく、どんな命も大切なんだと気づいた。過去にあったことはもう戻せない。だからこそ、これからすべての命をもっと大切にしていきたい。そして、誰にでも思いやりをもって接し、助け合い、自分から優しくすることを大切にしたいと思う。この思いやりの気持ちがたくさんの人に広がっていけば、すべての人がすべての命を大切にできるようになるはずだ。

(敬称略・年齢、学年などは応募締め切り時点)
(注)入賞作品を無断で使用したり、転用したり、個人、家庭での読書以外の目的で複写することは法律で禁じられています。

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