生命を見つめるフォト&エッセー

受賞作品

第2回エッセー部門

第2回入賞作品 − 小学生の部 
最優秀賞

「おじいさんの足」

横山 紗来(9)兵庫県

 お正月をすぎたころ、おじいさんの右足が、閉そく性動みゃくこう化症になってしまいました。24年前から人工とうせきをしているので、血かんの内がわにカルシウムなどがたくさんくっついて固まり、足先まで血が流れなくなったのです。右足のはだは赤黒く、親指のつめだけがとても白くぶあつくなって、とれてしまいそうなくらい、うき上がっていました。とてもいたがっていますが、いたみ止めを飲むとひどいりになるので飲みません。おじいさんの目は見えにくく、耳もほとんど聞こえません。13年前にのう内出血で左足にマヒがのこり、つえをついてゆっくりとしか歩けないから、トイレに間に合わないのが、いやなのです。いたみが出ると、がまん強いおじいさんは、太ももをおさえます。見ると、いたみで、右足首が勝手に、横に小さくゆれていました。

 おじいさんは、カテーテルという細いくだを使って血かんを広げる手じゅつを受けました。足先につながる血かんに血が流れるようになって、わたくしは、これで一安心だと思いました。でも、ちがいました。おじいさんの足のいたみは、前よりもっと強くなったのです。一日中いたがっています。ねむる時が一番ひどくて、ベッドで、かけぶとんが親指にふれただけで、いたくてさけんでしまうので、おばあさんが一ばん中起きて、お世話をするようになりました。だから、二人ともねむれなくて、すごくつらそうにしていました。

 わたくしは、夕方おじいさんとオセロをすることにしました。おじいさんはオセロが苦手ですが、わたくしに勝ちたくて、一手をおくのにすごく時間をかけてなやみます。楽しく集中して、いたみを少しでもわすれてくれないかなと考えました。それに、おじいさんがなやんでいる間、おばあさんが夕食の用意をしている横で、皮むきや卵をまぜたり出来ました。二人が、ちょっとだけでも楽になっていたらいいのになと思います。あと、おじいさんは、あやとりを知らないので、教えました。指がこわばってむずかしいけど、つづけるとよい運動になるかなと、わらっています。でも、急にはげしくいたみ出すと、おじいさんの手は止まり、右足は勝手に、ガタガタと大きく動いてしまいます。あまりのいたみに、顔をしかめてがまんしているおじいさんを見て、わたくしは思わず大声で、「なおれなおれ〜!」と、わたくしの手のひらをおじいさんの右足にかざして、いたいのいたいのとんでいけ〜、をしていました。何回かすると、おじいさんがわらい、もう大丈夫だと言ってくれました。足のゆれも止まっていました。

 わたくしは、いたみをわすれてねむる方ほうも考えてみましたが、まだ思いつけません。けれど、おじいさんが楽しくわらっていられるように、今出来ることを、わたくしもいっしょに、つづけていきたいと思っています。

(敬称略・年齢、学年などは応募締め切り時点)
(注)入賞作品を無断で使用したり、転用したり、個人、家庭での読書以外の目的で複写することは法律で禁じられています。

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