生命を見つめるフォト&エッセー

受賞作品

第2回エッセー部門

第2回入賞作品 − 小学生の部 
最優秀賞

「オオカマキリと過ごした103日間」

薛 知明(11)愛知県

 これまで20種類ぐらいの虫や水の生き物を飼ってきましたが、キャンプにも連れていった体の不自由なオオカマキリのことは、これからもずっと忘れないと思います。

 そのオオカマキリは5月13日にふ化したうちの1ぴきです。他は、卵のうをとった公園ににがしたり、このカマキリのエサになったりして、この1ぴきだけが残りました。

 最初はアリマキ、そして、クワガタのケースにわいたコバエなど、体とエサがだんだん大きくなっていくのが楽しかったです。

 しかし、8月初め、羽化のさい中に何か事故があったらしくて、わたしが家に帰って見たときカマキリは、ケースの底に落ちていました。長いむねは直角に折れ曲がり、はねも足もくちゃくちゃで、頭しか動きません。

 2年前にも同じ状態になったカマキリがいて、放っておいたら2日後に死んでしまいました。でも今のわたしは虫のお医者さんになるというゆめを持っていて、この状態が「羽化不全」だと知っています。そして、何とか助けたいと思いました。

 カマキリはだっ皮前後はエサを食べません。まずは水でわりばしの先をぬらして口もとに持っていきました。むさぼるように飲んでくれたのでうれしくなりました。

 それからは死んだ虫、ゆでたまごの黄身、まぐろのさしみ、金魚のエサ、ヨーグルトなどをわりばしの先にのせてあたえました。羽化不全から2日後に2はくのりょう育キャンプがありましたが、ジャムの空きびんの底にティッシュをしきつめてまん中にくぼみを作り、そこにカマキリを入れて持っていきました。玉ざにすわった王様みたいでちょっとかっこよかったです。

 キャンプの間、母が魚肉ソーセージをつめの先ほど残して、カマキリのエサにしました。ぶじに帰ってきましたが、それから2週間後にカマキリは死んでしまいました。

 ふ化してから103日間、体が不自由な状態で18日間も生きてくれましたが、このカマキリはメスだったので、おむこさんを連れてきて交びや産卵をさせてやりたかったです。

 家では、死んだ虫はエンマコオロギふうふのエサにしています。カマキリも頭から食べられていって、しなびたカマ以外、全てコオロギのおなかに入ってしまいました。

 メスのコオロギのおなかがしばらくぱんぱんにふくれていたのはカマキリのせいだけではなかったみたいで、コオロギが産卵かんを引きぬいた後の土からは、白くて細長い卵が数えきれないぐらい見つかりました。やがて卵が黄色っぽくなり、黄土色だったカマキリの命をもらったみたいでした。来年コオロギがふ化したら、また大切に育てます。

 わたしにもしょうがいがありますが、不自由な体でがんばって今はコオロギの卵になってねむっているカマキリのように、命をしっかり使って生きていきたいです。そして、たくさんのいろいろな命を大事にしたいです。

(敬称略・年齢、学年などは応募締め切り時点)
(注)入賞作品を無断で使用したり、転用したり、個人、家庭での読書以外の目的で複写することは法律で禁じられています。

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