生命を見つめるフォト&エッセー

受賞作品

第6回エッセー部門

第6回入賞作品 − 小学生の部 
優秀賞

「さみしくて不安で泣いた夜」

立川 蒼羽(11)神奈川県

「あっくん? ママね、おなかが痛いから病院によってから帰るね。」

 夏休み中、いつも夕方5時半ごろ仕事終わりに必ずかかってくる電話は、いつもの「あっくん? ママ今から帰るからね。」とは違った。ぼくは「うん。わかった。」とだけ言って電話を切った。それからしばらくたってもお母さんは帰ってこなかった。

 夜9時頃にやっと電話がきた。

「あっくん? ママね、今日から入院して明日の朝10時から手術をすることになったの。手術は5、6時間くらいみたい。終わったら電話するからね。」

 毎日一緒にいたお母さんが急にいなくなった。少しだけ不安になったけど、その日はおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に寝ることにした。

 次の日、夕方になっても電話はかかってこなかった。夜9時になってもつながらない。手術はとっくに終わっているはずなのに。不安で眠れなかった。

 手術の次の日の朝、早く目が覚めて朝5時半に何度も電話をしたけれど、つながらない。涙が出てくる。夏期講習があったが、休むことにした。

 お昼頃、電話が鳴った。電話の表示に「ママ」と出ている!

「あっくん? 電話が遅くなってごめんね。ママね、手術が長引いて麻酔もすごくきいて、起きるのが遅くなっちゃったみたい。今は少し熱があるけど、もう大丈夫だからね。あっくん、大丈夫? さみしくなかった?」

 さみしくて不安で眠れなかったけど、「うん。大丈夫だよ。」と答えた。

 お母さんのおなかには16センチと9センチの大きな腫瘍しゅようができていた。

 退院をしてから入院中の話をたくさん聞いた。手術をする前、もうすぐ赤ちゃんが生まれるおなかの大きい看護師さんと夜中にたくさん話をして安心できたこと、その日が最後の夜勤で生まれてくる赤ちゃんを楽しみにしていること、赤ちゃんは男の子と聞いてぼくが生まれた時のことを思い出したこと。全身麻酔をするときの恐怖、手術が終わって熱が40度くらい出てすごくつらかったけれど、夜中に何度も何度も冷たいタオルに交換してくれた看護師さんのこと、麻酔のせいで目は開けられなかったけれど、優しく声をかけてはげましてもらったこと。


 病院の皆さん、
 お母さんを助けてくれて、優しくしてくれてありがとうございました。

 ぼくも優しく人の気持ちに寄りそえる大人になりたいと思った夏休みでした。

(敬称略・年齢、学年などは応募締め切り時点)
(注)入賞作品を無断で使用したり、転用したり、個人、家庭での読書以外の目的で複写することは法律で禁じられています。

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