受賞者紹介

【第75回】文部科学大臣賞作品紹介(要約)

読売新聞紙面に要約して掲載した、文部科学大臣賞受賞作品を紹介します。(敬称略)

中学校

私もあなたもそのままで

愛知県・岡崎市立竜海中学校 3年
都築ツヅキ紗奈サナ

 周りの人や自分をあるがまま受けいれ、お互いに分かり合える世界をつくっていきたい。私がそう考えるようになったのは、アメリカでの生活を経験したからだ。 現地の私の学校では白人の割合が大きいものの、黒人、ヒスパニックに加え中東やインドなど様々な背景を持つ生徒が通っていた。多種多様な人がいる教室はカラフルな絵みたいだった。 アメリカの学校では人種差別について学ぶ機会がある。友人や先生も敏感だ。 ある日、学校の暗い地下室を歩いていると突然、目の前に宙に浮く白いTシャツが現れた。よく見ると黒人の男の子が立っている。暗い周囲と肌の色が同化し、見えなかったのだ。私は思わず笑いながら言った。「白いTシャツだけが動いているように見えたよ」。男の子も大笑いした。おなかを抱えて全員で笑った。しかし、男の子と別れた後、友人の一人が発した言葉が忘れられない。「さっきの子は肌の色をばかにされたと感じてなくてよかった。紗奈は日本人だから、問題にならないかもしれないけどね」。他の友人もうなずいていた。友人からは差別的と思われる発言はしたくない、という気持ちが伝わってきた。 ある出来事をきっかけに他人事でいられなくなった。授業で小説を読んでいた。ベトナム戦争後、アメリカに難民として逃れた10歳の少女ハの物語だ。ベトナム人著者による自伝的小説だ。言葉も習慣も文化も違う国で奮闘するハを自分のことのように感じた。 ハは、ある日学校で「パンケーキフェイス」とからかわれる。顔がとても平たいことを表す。私は最初、この言葉の意味がわからなかった。自分の顔がからかわれる対象になっているのを知り、ショックだった。授業後に何人もが私のところへきて心配そうに言った。「アジア人がパンケーキフェイスでも大丈夫だと思うよ、気にしないで」 私は、この顔を当たり前に生きてきた。なぜ慰められるのだろう。みんな口に出さないけれど、アジア人をかわいそうだと思っていたのだろうか。そもそも、違うことに優劣はないはずだ。違いは、多数派や自分にとっての普通を前にすると、途端に違和感になって人は無意識に言葉を選ぶようになる。白いTシャツを着た男の子に対してもそうだったのか。有色人種である私はその男の子と同じ立場という見えない線引きがされたのか。しばらく憂うつだった。 親友のエリザベスにその出来事を打ち明けた。彼女は真剣な表情をして私を見た。「あなたの顔や笑い方、しぐさ、話し方も大好きだよ。全部ひっくるめてあなたでしょう。あなたが何人でも関係ないから」 もやもやした気持ちは吹き飛び、自分はこのままで良いのだという安心感でいっぱいになった。自分をそのまま受け入れてくれる人の存在がどれほど人の心を強くするのか、身をもって知った。 どんな違いがあっても分かり合える世界になってほしい。まず私ができることをしよう。目の前の人を自分のものさしで見るのではなくその人のそのままを受け入れ、尊重しあう関係をつくっていきたい。

多様さを尊重 伝わる

「あるがまま受けいれ、お互いに分かり合える世界をつくっていきたい」という書き出しに込められた作者の強い信念。その信念は、アメリカの現地校で学んだ事、経験した事と深く結びついています。日本人としての自己を再認識し、多様な人々と尊重し合う大切さをしっかりと伝えている作品です。(山口茂)

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