受賞者紹介

【第74回】文部科学大臣賞作品紹介(要約)

読売新聞紙面に要約して掲載した、文部科学大臣賞受賞作品を紹介します。(敬称略)

小学校低学年

みえるってすてき

石川県・金沢大学人間社会学域学校教育学類附属小学校 1年
河合カワイ泉華ミズハ

 ごつん。あたまをさわるとたんこぶができていた。いつものことだ。めになみだがうかんだけれど、グッとこらえた。

 そんなまいにちに、じけんがおきた。ママはわたしの手をギュッとにぎって、いったことのないたてものにはいっていった。めのびょういんであることはわかったが、なぜわたしが、ここにこなければいけないのか、まったくわからなかった。

 しりょくけんさだ。けんさはめがねのかたちをしていて、みぎめ、ひだりめにくろいいたをいれて、かためのしりょくをはかるらしい。みぎのめに、くろいいたがいれられたしゅんかん、ブルッと、からだがふるえた。

 ひだりめにいたをいれた。こんかいは、こわくなかった。みぎめをもういちどかくした。しぜんとひざがガクガクして、あせがポタリとおちた。「こわい」。おもわず、さけんだ。けんさがおわり、へなへなといすにすわった。こわくて、まだガタガタとふるえていた。

 せんせいとママがむずかしいはなしをしているが、わからなかった。ふとうえをむくと、かなしそうなママのかおがめにはいった。「がんばろうね」と、ママがいった。「きがつかなくて、ごめんなさい」と、あたまをふかくさげてきた。

 せんせいは、わかりやすくせつめいしてくれた。わたしのひだりめは、じゃくしだ。そのうえ、きょうどのえんしだというのだ。ひだりめはうごいていない。つまり、みえていないのだ。

 びっくりした。おもわず、「みえているよ」とさけんだ。ママがうしろからだきしめてくれた。「だって、みえてるもん」。もういちど、はっきりとつたえた。

 よるは、いつもどおりねて、あさおきたら、いつもとちがうことがあった。ママがニコニコちかづいてくる。わたしは、おもわず、あとずさりをした。ママが、えいっと、わたしのみぎめになにかをはりつけた。まっくらやみにおおわれた。こわい。わたしはなきさけんだ。ママはやさしくいった。ひだりめにうごいてもらうために、みえているみぎめをかくして、せいかつしなければいけないと。

 もっといやなことがおこった。めがねだ。わたしはぜつぼうてきなきぶんで、パパにたすけをもとめた。パパがそっーと、わたしをだきあげてくれた。いつもは、わらってはなしをきいてくれるパパだけれど、しずかにくびをふって、わたしのめがねをかけなおした。わたしにあまいパパですら、たすけてくれない。わたしはこえがかれるまで、なきさけんでいた。

 1ねんせいになって、きょうはけんさけっかがでるひだ。あのひから、きょうふにおびえながらがんばった。せんせいが、もうじゃくしではないよっと、たいこばんをおしてくれた。

 めがねは、まだえんしがなおっていないから、つけなければいけない。いまではあいぼうだ。みえるようになっておもう。みえるってすてきなことだよ。

心の動きを具体的に

 突然の目の検査と治療に本人もママも不安と恐怖でいっぱい……。が、こうした感情や心の動きは目に見えないので「具体的な動きで表す」のが作文の基本。小学1年生がそれをみごとに実践していることに驚きました。どこがそれにあたるかチェックすると、みなさんが書くときのヒントになるでしょう。(石崎洋司)

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